Building Construction Management Lab at UT

「内田祥哉は語る」出版

 2021年5月に96歳で亡くなられた内田祥哉先生のインタビューをまとめた書籍が出版されます。大学院生の頃から20回ほど、建築史が専門の戸田穣氏とお話を伺う機会をいただきました。

 内田先生は、1925年5月にお生まれになり、旧制武蔵中学を経て東京大学第一工学部建築学科を1947年に卒業、逓信省に入省し、逓信省を引き継いだ電電公社でも数多くの電話局・電信局、および中央学園の一連の建築群の設計に携わられます。武蔵学園のサイエンス教育および、小坂秀雄らのもと戦後間もない時期に設計の第一線で活躍された経験は、後年までの設計や研究に影響を与えています。

 1956年には、東京大学に助教授として着任され、Building Element論や構法論・性能論と言われる学の体系を打ち立てられました。戦後の大きな転換期にあって、建築を構成する部位毎にその構成方法や性能を明らかにし、求める性能と付き合わせて構法を合理的に決定する手法の研究と言えます。設計活動も継続して行い第一工房と共同で佐賀県立図書館、佐賀県立博物館(日本建築学会賞)、1970年代後半以降は同じく佐賀県の有田市で佐賀県立九州陶磁文化館(日本建築学会賞)、有田焼参考館など、また、武蔵学園の再開発など、様々な設計事務所と協同で優れた複数の建築を設計されます。

 設計と同時に、パイロットハウスやBL部品、KEP(Kodan Experimental Project)など、工業化やシステムズビルディングの開発にも関わられるのと同時に、構法学から構法計画学へ、オープンシステムへ、さらにはCHSなど長寿命化や柔軟性へと研究の領域も大きく拡張していかれます。先述の有田市の作品群や武蔵学園の作品群にはこうした長寿命化や柔軟性への志向が強く読み取れますし、大阪ガスとのNEXT21は一つの集大成ともいえる実験住宅です。1980年代以降には木造建築研究フォラムを立ち上げられるなど、木造建築の振興にも力を入れられ、ご自身でも明治神宮神楽殿などを設計されます。

 内田研究室の活動としては、設計と研究相互のフィードバックを行うため、東京大学・内田研究室ではGUP(A Group of University’s Prefabrication System)と呼ばれる実践に近い設計プロジェクトを10回ほど継続され、NTT筑波社宅など実現したものも見られます。東京大学退官後は明治大学でも、Vフレーム、重ねて並べられる机、立体トラスなど、実際にものをつくり改良を加えていくことで、構法の洗練や設計図では表現できないものを学生に経験させようとされました。

 このように戦後間もない時期に設計・研究活動を始められた内田先生の思想や実践は、住宅不足期の工業化から始まり、時代の変化とともに長寿命化や木造まで大きく展開しています。また、建築家かつ大学に籍を置く研究者として設計活動と研究活動、さらには教育活動が互いに影響を与え合いながら進められている点も特徴と言えます。そうした内田先生の広範囲かつ多様な業績、活動の遍歴を、本書では以下の12章にまとめています。各章には権藤と戸田氏で関連するコラムをつけました。

はじめに
第1章 大学まで
生い立ち/笄尋常小学校のころ/旧制武蔵高等学校のころ(一九三七―一九四四年)/東京帝国大学のころ(一九四四―一九四七)/卒業論文・卒業制作について(一九四七)/終戦前後(一九四五)・空襲の記憶/Column1一九二〇年代と先達たち

第2章 逓信省・電電公社
逓信省入省/逓信省・電電公社時代の設計/中央電気通信学園宿舎/鉄筋コンクリート/デザインの参照元/中央学園講堂/残響時間について/トラスについて/Column2 戦後の若者たち

第3章 大学に戻る――BE論
東大に戻る/左官・雨仕舞い・取り付け強度/筋の通った研究/BE論の始まり/海外からの新材料・サイエンスへの憧れ/BE論と環境制御/BE論の限界/Column3 一九五〇年代の建築学

第4章 自邸
経緯/平面計画/住宅面積/モデュール/増築/Column4 手摺り

第5章 佐賀前期
青年の家/佐賀県立図書館/佐賀県立博物館/Column5 地方都市の戦後

第6章 学生運動
建築運動との距離感/学生運動とのかかわり/Column6 近代建築の転回

第7章 構法計画・工業化とのかかわり
構法計画へ/産業界とのかかわり/行政による開発プロジェクト―パイロットハウス/設備ユニット試作競技/芦屋浜/建築家と工業化/建築とシステム/Column7 内田賞

第8章 東京大学から明治大学へ、学生とともに
GUP/テーマの変遷/GUPと実践/明治大学/軽量立体トラス/重ねて並べられる机/Vフレームと自在鉤/継続性/Column8 講義

第9章 武蔵
経緯/八号館/構法研究との関係/Column9 学校建築

第10章 佐賀後期
有田町歴史民俗資料館/九州陶磁文化館/有田焼参考館/陶工之碑/Column10 世代交代

第11章 システムズビルディング
システムズビルディング/KEPと住要求の多様化/長寿命化へ、CHS/NEXT21/NEXT21の住棟設計/クラディング/住戸設計/まちづくりへ/Column11 住民参加と建築家の立ち位置

第12章 木造へ
明治神宮神楽殿/木造とRC造/構法研究と木造/Column12 木造禁止決議

以上、鹿島出版会HPより転載。

これら12章に加えて、戸田氏が主に設計の面から、権藤が主に研究の面から論考を執筆しています。研究については、科学、歴史、システムなど、内田先生の研究に通底するテーマや、設計と研究の関係に対する内田先生の独自のスタンス、それによって構法研究がどのように展開してこられたかについて書きました。また、巻末には内田先生が関わった建築作品のリストと構法などの面からの解説、年表、文献リスト、図版リスト等をつけています。

ご関心があれば、書店等でお手にとってご覧ください。白井さん、江川さんのデザイン、山岸さんのポートレイトも素晴らしいです。鹿島出版会の渡辺さん、川尻さん(当時)のご尽力で出版までこぎつけました。内田先生の秘書の平井さんは最後まで図版等でお世話になりました。内田先生のご家族の方も大変な時期にもかかわらずご配慮をいただきました。何よりも内田先生には、何も分かっていない大学院生の頃から20回近くにわたって、本当に丁寧にインタビューにお答えいただきました。ありがとうございました。 権藤

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